続・科研費について

元から申請締め切りの時期、かつ、若手(S)と新学術領域研究(研究課題提案型)が募集キャンセルされたこともあって、科研費の話題が(通常よりは)目立つようですので、以前にtwitterのほうに書いた(ごく素朴な)考えを転載します。(前回のエントリもご参照ください。)

きちんとしたエントリを「はてな」に書きたかったのですが、時間がないのでこちらで:前にも触れましたが、税金を使う立場から見て、「税金の無駄づかい」は確実に存在します。が、それは「年度会計」と「人間は未来を完璧には予測できない」という(非常に明白な)事実との矛盾が最大の原因です。
したがって、(単年度にせよ複数年度にせよ)予算に使用期限が存在する限り、「見直し」とか「組み直し」とかで解決できる見込みはまったくありません。どれぐらいの予算が必要になるか絶対的に予測不可能なので、常にworst caseを考えて最大の予算を確保・使用しなければならないからです。
もっとも身近な実例として、「旅費が必要になるかどうか」は「学会に論文がacceptされるかどうか」によって完全に左右されますが、それを予算申請時(数年以上前)に予測することは100%不可能です。
科研費は一年だけ繰り越しができるようになってやや改善されましたが、「論文がrejectされたから」という繰り越し理由は認められていません。
何千万円(何億円?)もするような大型実験装置などに比べれば旅費なんて誤差の範囲なのでまだ良いのですが、(私には縁がありませんが)高価な実験器具も同様でしょう。研究の成否や進捗が完全に予測・計画できるとしたら、それはすでに研究ではありません。
予算を返還することができるようになり、かつ、それが「positiveに」評価されるようになれば解決すると思いますが、現状は正反対です(予算の返還は大問題)。それを実現するというマニフェストがあれば大賛成なのですが、寡聞にしてまったく知りません。
もっとも、こんなことは税金を使ったことがある人間ならば誰でもわかっていて、そういう意見が伝わっていないはずはないので、何か実現できない理由があると思うのですが…(以前に「はてな」で言及した憲法第86条が本当に原因なのでしょうか。)
参考: http://bit.ly/388t8u
「その年度に割り当てられた予算を消化するのが官僚の義務となる」「血税の浪費をただ単に奨励するのでなく、義務付けている」
(日本語版Wikipedia全体のデフォルトのようなものですが)出典がほしいところです。専門家間では常識なのでしょうか。

2009年世界大学ランキング by Times Higher Education/QS

ちょっと遅いですが、
http://www.timeshighereducation.co.uk/WorldUniversityRankings.html (目次)
http://www.timeshighereducation.co.uk/Rankings2009-Top200.html (総合)
http://www.timeshighereducation.co.uk/Rankings2009-Top50-IT.html (工学 & IT)
(via いろいろなところ)
人間による評価なので(?)多少の疑問はあるかもしれませんが、ほぼ実感と一致しているように思います。(分類が大きすぎるので、可能であればもっと細かくわけてほしいところですが)

科研費

以前にも参照させていただきましたが、「私と科研費」第1回(小林 誠・日本学術振興会・理事)より:

明確な研究課題の設定に至る前の試行的な研究や、経常的なデータの蓄積を必要とする研究、あるいは上述のような理論研究など、比較的少額でもよいが安定的な研究費が手当てされることが望ましいケースが多くある。こうした基礎的な研究に対する経費は、国立大学の場合、以前は講座研究費という形で一定の研究費が手当てされていたが、法人化後、運営費交付金が毎年1%削減されており、基礎的な研究費の部分が縮小し続けているのではないかと推察される。その肩代わりを現在の競争的資金制度に求めるのは筋違いではなかろうか。

端的に言うと、研究資金(私の場合は主に学会発表のための旅費など)に関する手続きの負荷が大きいため、研究をする時間がありません(確率が低いので、「切れ目」のないように研究を続けるためには、ほぼ常に何らかの手続きをし続けていなければなりません)。かといって、資金がまったく得られなければ研究活動を行うことができないだけでなく、各種評価にも直接影響します。金額はもう少し小さくても良いので、期間をもっと長く(できれば有限の金額で期間は無限に)していただけると有難いのですが、やはり憲法第86条問題なのでしょうか。

P.S. 科研費使途の制限は、文科省・学振レベルでは大幅に緩和されています。(説明会資料内「科学研究費補助金制度について」27〜28ページ等参照)

  • 「研究者使用ルール」に特に記載がないことを事務担当者に尋ねると、前例がないので購入を止めて下さいと言われる。
  • 「研究者使用ルール」に特に記載がないことを「学内ルール」として決めていて、それが大変厳しい。
  • 一部の研究機関の方におかれては、補助条件等を厳格に捉え過ぎて、結果、研究者が使いにくいと感じる例が見受けられる。
  • これらの点について無責任で良いと申し上げるのではなく、補助事業(研究課題)の研究のために必要な経費が使えないというのでは本末転倒。
  • 現在、研究のために必要であって支払えない経費はほとんどない。「これ以上何を改めることができるか」と言えるレベルまで柔軟にしてきている。
  • 科研費制度としては、ここまで柔軟に使用できるようにしているので、これを如何に上手に使うかは、各研究機関の腕の見せどころである。

クレタ人のパラドックス

ある理由で「論理学」(野矢茂樹著)*1を(時間的余裕がなかったので極めて速く)読んだ/眺めたのですが、その161ページに

なお,流布した誤解に,「あるクレタ人曰く,『クレタ人はみんな嘘つきだ』,この発言は矛盾している」というものがある.しかし,これは別に矛盾ではない.(検討されたし.)

(強調筆者)とあり、なるほどと思いました。(有名事実なのかもしれませんが、私は恥ずかしながら考えたことがありませんでした。あるいは聞いたことがあるのかもしれませんが、覚えていませんでした。)

P.S. 同じ著者の「論理トレーニング」も良い本でした。

*1:専門書ではなく(素晴らしい)入門書ということになっていますが、このように(私にとっては)自分自身の良い勉強にもなりました

夜のトイレからの声

昨日の夜、どこからともなく「くわっ  くわっ  くわっ  くわっ」という声がするので(数分以上)、寝室で寝ている次男かと思ったのですが、その寝室から妻が出てきて「何の音?」と言います。外に鳥でもいるのかと思ったのですが、家の中から聞こえてきます。すわ心霊現象か!と思って音源を探したら、トイレにおいてあった時計でした。アラーム音を録音できるのですが、長男が(次男も?)いたずらしたようです。

FLOPS 2010論文要旨締め切り10/16(金)、本文締め切り10/23(金)

が近づいています。日本で開かれている数少ない(唯一の?)関数型・論理型言語に関する国際会議の第10回で、場所は仙台です(来年4月)。よろしくお願いします。

http://www.kb.ecei.tohoku.ac.jp/flops2010/wiki/index.php?CallForPapers

東京大学理学部情報科学科(IS)紹介パンフレット2009年度版

ができたそうです。部外者が見ても(むしろ部外者のほうが?)カリキュラムなどがわかって面白いかもしれません。

http://www.is.s.u-tokyo.ac.jp/pamph/
(一括ダウンロードはhttp://www.is.s.u-tokyo.ac.jp/pamph/pdf/utokyo_ISguide2009.pdf